東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)204号 判決
二 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。
右争いのない事実によると、本願商標は、別紙(一)のとおり、片仮名文字「サンリツト」を筆記体で左横書にしてなるものである。
そして、弁論の全趣旨によれば、右構成が原告商号の片仮名文字部分に対応することは認められるが、これが原告商号の略称として広く認識され、独自の識別力を有するとする原告の主張事実を認めうべき何らの証拠もない。
また、同じく前項の争いない事実によると、引用商標は、別紙(二)のとおり、上部に翼をつけた小天使を童画的に図案化した図形を配置し、その下部に図形よりはやや狭少な配置に、欧文字「SUNRICH」と筆記体の片仮名文字「サンリツチ」とを上下二段に左横書してなるものであるが、右構成から、後記認定のような文字部分より生ずる「サンリツチ」の称呼にのみよる取引を排除し、もしくは、その称呼に不可欠に伴うものとしての、原告主張のような「太陽つ子」「サンリツチ坊や」「サンリツチエンゼル」といつた特定の観念を生ずるとは、到底認められず、また、かかる観念を需要者に想起させているとの証拠もない。
ところで、前記認定の各構成によれば、本願商標から「サンリツト」の称呼を生じ、引用商標から「サンリツチ」の称呼を生ずることが認められる。
そこで、両称呼を対比すると、両者は、共に五音よりなり、末尾音において「ト」と「チ」との差異があるほか、他の四音を同じくする。右末尾音の差について検討するに、両者は、共に国語の五〇音中「タ」の同行に属し、いずれも舌尖と上前歯ないしそれに続く硬口蓋とが関与して調音する無声破裂音である子音〔t〕又は〔tf〕が、それぞれ、必ずしも開口の度が広くない母音〔o〕又は〔i〕と結合したものであつて、促音「ツ」を伴う「リ」にいたる「サンリツ」の四音に続くところから、比較的弱く発音される傾向があるので、きわめて近似した音調、音感を備えるものである。しかも、両者共、一般的には通常用いられる特定の語義を持たない創造語として感得されるにすぎないものである。したがつて、両者は、それぞれ一連に称呼すると、全体の語感として、類似し、聴者をして彼此聴き誤るおそれがあり、かつ、両者併列して称呼、聴取する場合においても彼此弁別しうべき特徴も明らかではなく、混同のおそれが少なくないといわざるをえない。
なお、原告は、両者中語頭の「サン」部分及び引用商標の語尾「リツチ」部分の識別力について種々主張するところがあるけれども、右認定に照らし採用することはできない。
そうすると、本願商標と引用商標とは、称呼上きわめて紛らわしく類似する商標といわねばならない。
そして、両商標は、指定商品を同一とすることも前記認定により明らかであるから、本願商標が商標法第四条第一項第一一号の規定に該当するものとした審決の判断に誤りはない。
したがつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は、理由がなく、棄却するほかはない。
〔編註その一〕本件登録商標に関する事項は左のとおりである。
訴外厚木ナイロン工業株式会社は、昭和四三年一一月二一日、別紙(一)のとおり、筆記体の片仮名文字で「サンリツト」と左横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。)につき、第一七類被服(運動用特殊被服を除く。)、布製身回品(他の類に属するものを除く。)寝具類(寝台を除く。)を指定商品として、商標登録出願をし(昭和四三年商標登録願第八三二〇二号)、昭和四五年二月二三日出願公告(商標出願公告昭四五―七二九四号)された。その後、原告は、昭和五〇年三月一四日、本願商標登録出願により生じた権利の譲渡を受け、その旨の届出を同月一八日了したが、昭和五五年六月二五日拒絶査定を受けたので、同年八月二六日審判を請求し、昭和五五年審判第一五六二七号事件として審理されたが、昭和五七年七月八日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年八月二七日原告に送達された。
〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。
別紙(一)
<省略>
別紙(二)
<省略>